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若い人たちにはもっと、ピルを知ってほしい。未来のためにも。

若い人たちにはもっと、ピルを知ってほしい。未来のためにも。

公開日: 2023.07.26
更新日: 2023.07.26

Oops Magazine Vol.15
産婦人科医 「 丸茂レディースクリニック院長」丸茂先生

旭川医科大学の医学部を卒業したのち、東京大学医学部附属病院産婦人科、板橋中央総合病院産婦人科医長などをへて、2013年に丸茂レディースクリニックを開設。日本産科婦人科学会所属。

今回お話を伺ったのは、産婦人科専門医の丸茂先生。ピルや生理にまつわるいろんなギモンに、お答えいただきました。

若い人たちにはもっと、ピルを知ってほしい。未来のためにも。

― 先生、今日はよろしくお願いします。まずは簡単に、先生の自己紹介をお願いします。

丸茂レディースクリニック院長の、丸茂です。産婦人科医になってかれこれ30年以上。妊娠・出産だけでなく毎月の生理の悩みも含め、女性のさまざまなライフステージに合わせて、微力ながらお手伝いできることがあればと思っています。ピルのこともたくさん勉強しているので、答えられることだったらなんでも聞いてください。

― ありがとうございます!早速ですが、素朴なギモンを…。ピルって避妊のためにつくられたお薬ですよね?そもそもなんで、口から飲んだお薬で避妊できるのでしょうか?

なかなかするどい質問ですね。(笑)もちろんはじめは経口の避妊剤なんて無かったんです。いまメジャーな低用量ピルには2種類のホルモンが入っていますが、実は、一番最初につくられたのはプロゲステロン(黄体ホルモン)のみの避妊剤だったんですよ。黄体ホルモンのはたらきは知っていますか?

― うーん、なんとなく。生理前に増えてくるホルモン、っていうイメージです。

そうそう。生理前ということはつまり、「排卵後」ということ。もしそのまま妊娠したときに、その妊娠状態をキープするはたらきがあります。つまり、黄体ホルモンが出ているときは、「今は排卵は必要ないよ」という状態だということ。経口避妊剤は、このメカニズムに目をつけて、黄体ホルモンを補ってあげることで排卵を抑え、避妊効果をもたらすお薬として開発されました。

― なるほど!あれ?でも、それならなぜ、ピルには2種類のホルモンが入っているんでしょうか。

そうですね、ピルにはもう一つ、エストロゲン(卵胞ホルモン)というホルモンも入っています。さきほど、黄体ホルモンは生理前に増えるイメージ、と言っていましたね。生理前って、ニキビができたり、食欲が増したりしませんか?

― しますします!ニキビができていると「あぁ、そろそろだな」って思います。

実は、黄体ホルモンには男性ホルモンに似たはたらきも含まれていて、それが原因で生理前のトラブルが起きることがあります。だから、黄体ホルモンだけを補うことで起こるトラブルを抑えるために、卵胞ホルモンが加えられたんですよ。卵胞ホルモンは本来、「排卵準備が進んでいる」ときに分泌されるホルモン。なので、お薬で補うことで、脳から卵巣へ「排卵の準備をしてね」という刺激が送られるのも抑えられ、結果として避妊効果にもつながっているんです。

― ちょっとむずかしい…。でも要は、2種類のホルモンの絶妙なバランスで避妊効果がもたらされている、ということなんですね。

そう、副作用の症状やリスクを下げるためにホルモン量が調節され、絶妙なバランスでしっかり避妊効果が得られるようになっているのが低用量ピルです。とにかく、多くの若い女性が長期間安全に取り入れられるように、かなり工夫されてきたお薬だと思いますよ。

― でも、排卵を抑えることで、デメリットはないのでしょうか?

もちろん、今すぐ妊娠したい人にとってはデメリットですね。(笑)逆に言うと、そうじゃなければ、排卵を抑えることのデメリットはあまり無いと言えるんじゃないかな。妊娠中や授乳中は排卵が自然とストップするものなので、排卵がしばらく起こらないこと自体は問題ではないんです。実は排卵って、毎回、卵子が飛び出すときに卵巣の膜が破れているって、知っていました?

― え!排卵=卵子が飛び出す、というイメージでしたが、膜を破って飛び出しているということですか?!

そうです。もちろん破れても修復されますが、繰り返せば当然、がん化するリスクが上がります。だからピルの服用は卵巣がんのリスクを下げると論文で報告されているんです。(※1)

― そうなんですね。じゃあ、ピルを飲んでいるあいだは、卵巣はちょっと休憩できているっていうことでしょうか?

ずばり、その通り!服用をやめれば1〜3ヶ月で自然な排卵が戻ってきますし、たとえば10年とか、長い期間の服用も将来の妊娠率には影響しない(※2)と考えられているので、総じてメリットの方が多いのではないかと思っています。

毎月問題なく生理がくる、そんな人にこそ知ってほしい

― まだまだ知られていないピルのメリットがたくさんありそうです。最近では生理悩みに対する効果も注目されていますよね。先生は、生理を楽にするためにピルを飲むことについて、どう思いますか?

はっきり言って、大賛成です。とくに少しでも痛みがあるなら、僕はピルをおすすめしています。痛みを我慢しても良いことは一つも無いですし、痛みがあるということは、少なからず、子宮内膜(生理のときに出てくる血のようなもの)の量が多い可能性があり、放っておくといずれ子宮内膜症などにつながるケースもあります。ピル服用中は、子宮内膜が増えすぎないように調整されるので、子宮内膜症の予防(※3)にもなると言われています。

― 子宮内膜症…って、なんでしょうか?

本来、子宮の中だけにできるはずの子宮内膜が、生理のときに卵管を逆流したりして、子宮以外のところで癒着・増殖する病気です。子宮内膜症は高確率で将来の不妊の原因にもなります。生理の回数・期間が重なれば重なるほど、子宮内膜症になる機会は増えるので、痛みや量の程度にかかわらず誰にでも起こりうることなんですよ。今はもう10代でも、子宮内膜症を予防するためにピルの服用が推奨されています。

― 10代でも推奨されているんですね!そんなにメリットが大きいものだとは知りませんでした。とはいえ正直、生理の悩みって、なるべくセルフケアで改善する方が良いというイメージもあります。身体を冷やさないように、とか、血行が良くなる食べ物を、みたいな。

うーん。もちろん、温めて運動して食事にも気をつけて、っていうのはすごく良いと思いますが、それだけでみるみる生理が楽になるかというと、やっぱりなかなか難しいと思います。生理痛は、子宮内膜から分泌される「プロスタグランジン」という物質が主な原因。子宮内膜をしっかり排出するために子宮を収縮させるはたらきがあり、それが痛みにも繋がっているんです。子宮内膜が増えるとプロスタグランジンも増えるので、根本的に生理痛を楽にするには、子宮内膜をうすくするのが良いと考えられているんです。

― そっか、ライフスタイルを意識しても、子宮内膜がうすくなるわけではない、ということですね…。

もし仮に生活習慣に気をつけることで子宮内膜が薄くなるとしたら、むしろ困る人も出てきます。健康的な生活をするほど、妊娠しにくくなってしまうということですから!なるべくセルフケアで解決すべき、という意見には、薬=やむを得ないときに頼るもの、という考え方が基本にあるのだと思いますが、医療はやむを得ない事情がある人のためだけのものだとは思いません。メリットとデメリットを比べて、メリットの方が勝つのであれば、無理せず、いろいろ頼ってみたらいいんじゃないかなと思います。

― そうですね。聞けば聞くほど、世の中にもっとピルが広まったらいいなという気持ちになりました。

僕のクリニックでは、4Dエコーといって、おなかの中にいる赤ちゃんの動きや表情をリアルタイムで見れる検診を行なっています。大変なこともありますが、お産というポジティブな場面に立ち会えるのが産婦人科の素敵なところ。妊娠を望む人には、なるべく幸せな妊娠・出産を経験してもらいたいからこそ、ピルのことも含め、正しい知識と、頼れる場所を提供していけたらいいなと思っています。

― 丸茂先生、今日は本当にありがとうございました!

あとがき

時折「ちょっと待ってね」と言って、これまでご自身でとられてきた手書きのノートをめくりながら答えてくださった丸茂先生。医療の領域でも、たった一つの答えが存在することはありません。さまざまな情報が飛び交う中で何を信じ何を選ぶのか、日々問われているような時代だからこそ、一つひとつ知識を積み上げてきた人の出す答えには、その根拠や正確性以上に、信じたいと思わせるものがありました。

  • (※1OC・LEPガイドライン2020年度版より)
  • (※2OC・LEPガイドライン2020年度版より)
  • (※3OC・LEPガイドライン2020年度版より)

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