インタビュー:佐藤 明男先生

インタビュー:佐藤 明男先生

AGAの治療薬「フィナステリド」を、国内ではじめて処方したのは佐藤先生!? そんな佐藤先生に詳しくAGA_治療について聞いてみました。

公開日: 2025.03.03
更新日: 2026.06.24

Oops Magazine Vol.8
医師 佐藤 明男

佐藤 明男(さとう あきお)| 北里大学医学部卒業。1998年、厚生省(当時)高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学。
現在、医療法人TMC理事長、さとう美容クリニック院長。兼任。北里大学医学部形成外科・美容外科客員教授。日本臨床毛髪学会・理事

今回お話を伺った佐藤先生は、業界の中でも「レジェンド」と名高い評判得ている、AGA治療の第一人者。前編では、AGAにおける基本的なメカニズムを中心に、様々な情報が渦巻く現状の課題と,今後どうなっていくべきかについてお話しいただきました。

AGAの原因は「ヘアサイクル」の乱れ!?

― 本日はよろしくお願いします!まず最初に、佐藤先生の簡単な自己紹介をお願いします。

東京メモリアルクリニックで理事長、さとう美容クリニックで院長を務めています、佐藤です。若く見られることもありますが、65歳です。髪の毛フサフサでしょ(笑)形成外科医ですが、髪の毛の治療を始めて20数年。日本では2005年に発売されたAGAの治療薬「フィナステリド」を、国内ではじめて処方したのは僕だと思います。イギリスでは1998年に発売されていたのですが、当時のキックオフミーテイングから参加していたり。AGA治療のオピニオンリーダーとして、学術面を含めて牽引してきました。そんな過去もあって「レジェンド」と呼ばれることもあります。(笑)

― すごい。治療薬が開発された当初から関わっていらっしゃったんですね。先生がレジェンドと呼ばれる理由が分かりました。そんなAGAの基本的なメカニズムについて教えてください。

AGAは、Androgenetic Alopeciaの略で、日本語で言うと「男性型脱毛症」のことです。

抜け毛の量が増えたり、抜け毛の先端が細くなったり、おでこが広くなってくるのがAGAのサインで、簡単にいうと髪の毛がきちんと成長する前に抜けてしまうことです。

― 髪の毛が大人になる前に子供のまま抜けてしまうということですね。なぜ成長する前に抜けてしまうのでしょう?

「ヘアサイクルの乱れ」がAGAの原因です。もう少し具体的に説明しますね。そもそも、なぜヘアサイクルが乱れるかというと、男性ホルモンが5α還元酵素という物質と結びつくことによってDHT(ジヒドロテストステロン)というAGAの原因となる物質が生み出されるからです。このDHTがヘアサイクルの成長期を短くしてしまうので、薄毛が進行してしまう、というメカニズムです。

― 難しい言葉がたくさん…。とにかく「DHTがヘアサイクルを乱しているから、AGAになってしまう」のですね。では、ヘアサイクルの乱れを整えることがAGAの治療、と言い換えられるのでしょうか。

その通り。AGA治療のファーストチョイスと言われているのが「フィナステリド」という処方薬です。フィナステリドは先ほどお話しした5α還元酵素を阻害するので、DHTの発生を抑制します。これにより、ヘアサイクルが正常になりAGAが改善するというわけです。

AGA治療は「3日坊主」はダメ。中長期にわたって向き合うことが大切

― AGA治療をおこなうならまずは「フィナステリド」だと分かりました。とはいえ、どんな治療においても言えますが、改善における「個人差」は気になります。AGA治療に向いていない人の特徴など、あったりしますか?

ずばり、症状の進行具合が1番大きなポイントです。治療開始時点で、進行度合いが初期の方は治りやすいし、進行してしまっている方ほど治りにくいと言えますね。DHTの代謝など体質にかかわる部分も無関係とは言えませんが、フィナステリド治療自体は効果も忍容性も高く、患者満足度も高いことが分かっています。ただ、AGA治療は、10年、20年と長期的な治療になることは理解しておく必要がありますね。薬を毎日服用しなければならないので、「3日坊主」になってはいけません。

― 現状で薄毛を実感していない方でも、早くから対処しておいたほうがよいのですね。

はい。過去、日本人男性約500名を対象に、10年間フィナステリドを投与した実験がありました。AGAでは、症状の進行具合に応じて段階が設定されているのですが、10年間の治療をおこなった平均では、進行が1段階改善。ただ、放置すると2段階悪くなることが分かっているので、フィナステリドを服用している場合10年間で3段階改善することになります。

― なるほど!聞けば聞くほど、治療をおこなうなら早い方がよいことが分かります。ここまで医学的なお話をしていただいたのですが、ちょっと私の興味本位な質問をしてもよいでしょうか…。

なんでも聞いてください。

― 世にはばかる迷信について、ここでハッキリさせておきたくて。例えば海藻を食べると髪が増える、とか。

それは迷信ですね(笑)。海藻に含まれているミネラルが、髪の毛と同じであることが広まった原因だと思いますが、医学的にみれば意味はないと思います。

― 嘘っぽいとは思っていましたが、やっぱり嘘なんですね。おじいちゃんが薄毛だと、薄毛になりやすい、という話もよく聞きます。

まず、男性は全員、いつかは薄毛になるという前提に立つ必要があります。その上で考えても、たしかに遺伝による影響はありますね。隔世遺伝はX染色体遺伝なので、母方の祖父が薄毛だと2分の1以上の確立で薄毛になるのは、理論上正しいです。

― 説明いただくと納得感がありますが、根拠のないデマはまだまだたくさんありそうですね。

そう。コンプレックス産業の負の側面として、人の不安を過剰に煽ったり、根拠のない情報が流れている現状があると思っています。患者さんがいかに良心的なドクターにアクセスできるかが、この業界の課題ですね。

正しい医療に、最短でアクセスできるようにしていきたい

― 確かに。Youtube広告などで流れている脱毛の広告が一時期SNSで話題になっていました。「女性は毛をそるべき」という固定観念の植え付けではないかと。治療について正しい情報を患者さんに伝えるに、業界として今後、何が必要だとお考えですか?

→フィナステリドは通常、月5,000円程度で処方される薬ですが、オプションとして注射やサプリなども提供されているクリニックさんも多くあり、年間で50万~100万円の支払いになることもあり得ます。なので、薄毛診療や頭髪診療という形で皮膚科に近い診療をおこなっている医院をしっかり調べてもらうことが必要だと思います。また、Oopsさんのように、若い人に向けてアプローチできる情報の提供の仕方を、我々としても進めていくことが重要だと考えています。

(あとがき)

― 20数年、AGA診療に向き合い続けているからこその説得力に、終始うなずきっぱなしのインタビューでした。さまざまな情報が飛び交う昨今、特に医療についての情報の正誤を判断することは難しいと私自身感じています。ただ「不安を煽るような広告」を掲出しているかどうか、は1つの判断基準となるなと思いました。

聞き手:竹本萌瑛子
構成:竹本萌瑛子
写真:小林真梨子

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